LFM2.5-2.6Bとは何か
LFM2.5-2.6Bとは、Liquid AIが公開したオンデバイス(手元の機器で動かす)向けの言語モデルです。LFM2という自社アーキテクチャを土台に、131,072トークンの文脈長とエージェント向けの事後学習を足したものと説明されています。
数字で押さえるとこうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総パラメータ | 2.69B |
| 層構成 | 30層(22の短い畳み込みブロック+8のGQA=計算を共有して軽くする注意機構) |
| 学習量 | 34兆トークン |
| 語彙サイズ | 128,000 |
| コンテキスト長 | 131,072トークン |
| 対応言語 | 日本語を含む16言語 |
配布形式も複数あります。本体のほか、CPUでの実行に向くGGUF、環境を選ばないONNX、Apple Silicon向けのMLXが並んでいて、手元の機器に合わせて選べます。
性格をもうひとつ挙げるなら、常に考えてから答える推論モデルだという点です。回答の冒頭に思考用のタグが自動で入ります。エージェント処理では道具に渡すJSONを組み立てる場面が続くので、手元でJSONを整形して確かめられる環境を用意しておくと検証が速く回ります。
It builds on the LFM2 architecture with a 128K context window and agentic post-training. / Total parameters<strong>: 2.69B / Number of layers</strong>: 30 (22 double-gated short convolution blocks + 8 GQA) / Training budget<strong>: 34 trillion tokens / Vocabulary size</strong>: 128,000 / Context length**: 131,072 tokens / English, Arabic, Chinese, French, German, Italian, Japanese, Korean, Portuguese, Spanish, Vietnamese, Thai, Indonesian, Hindi, Russian, Polish / LFM2.5-2.6B is a pure reasoning model that always thinks before it answers. — アーキテクチャと文脈長・事後学習の位置づけ、モデル諸元の項目、対応言語の一覧、および推論の挙動に関する記述より
「4倍規模と競合」の中身
公式がいちばん強く押しているのが道具を使わせたときの性能です。道具の呼び出し・指示への追従・複数手順にまたがるエージェント処理で、4倍の規模のモデルと競合すると書いています。
根拠として挙げているのが学習のやり方です。広く使われているエージェントの実行環境の中で強化学習を行い、実際の組み合わせでの相性を上げたとしています。ベンチマーク用に鍛えたのではなく、動かす場所で鍛えたという主張です。
公式が公開している比較表では、10B未満のモデル群と並べています。たとえば道具使用の評価であるBFCLv4でLFM2.5-2.6Bは56.88、パラメータが約3倍のgemma-4-E4B-it(8B)は46.39。指示追従のIFBenchでは59.17に対して39.24でした。
ただし数字が全域で勝っているわけではありません。同じ表でLiveCodeBenchv6は59.41で、gemma-4-E4B-it(8B)の63.77を下回ります。コーディングは弱いという自己申告と、表の数字は一致しています。
Competitive with models 4x larger on tool use, instruction following, and multi-step agentic tasks. / Trained inside the most popular agentic harnesses to improve compatibility. / We compared LFM2.5-2.6B with relevant sub-10B models on a diverse suite of benchmarks. / | BFCLv4 | 56.88 | 36.98 | 46.39 | 50.56 | 60.13 | / | IFBench | 59.17 | 34.08 | 39.24 | 48.40 | 56.47 | / | LiveCodeBenchv6 | 59.41 | 54.92 | 63.77 | 60.85 | 69.86 | — 4倍規模との競合という主張、エージェント実行環境の中での学習、ベンチマークの比較対象、および本文で挙げた3指標の該当行より
速度とメモリ:スマホで動く根拠
オンデバイスを名乗る以上、効いてくるのは速度とメモリです。公式は自社の検証で最速だったとして、Apple M5 Maxで毎秒220トークン、Ryzen AI Max+ 395で毎秒113トークンという生成速度を挙げています。メモリは2.5GB未満。
スマホへの言及も具体的です。毎秒30トークン出れば実用に足るエージェントをスマホでも動かせるという書き方をしています。上の数字は高性能なPC向けチップでの計測なので、スマホでそのまま出る値ではありません。それでも必要ラインが30トークン/秒と示されていれば、手元の端末で足りるかどうかを見積もれます。
サーバー側の数字もあります。GPUでは高い同時実行時に毎秒15,000トークン近く、H100 1枚で1日およそ13億トークンとしています。手元でもサーバーでも同じモデルを使えるのは運用上の利点です。
220 tok/s on an Apple M5 Max and 113 tok/s on an AMD Ryzen CPU, in under 2.5 GB of memory. / Due to its efficient LFM2 architecture, LFM2.5-2.6B is the fastest model we tested, with decode speeds of 220 tokens/s on an M5 Max and 113 tokens/s on a Ryzen AI Max+ 395. / At 30 tokens/s, it allows you to run capable agents even on a phone. / … reaching almost <strong>15K output tokens per second at high concurrency</strong>, roughly 1.3B tokens per day on a single H100 — 復号速度とメモリ使用量、計測に用いたチップ、スマートフォンでの実用ラインの提示、および GPU 実行時の処理量に関する記述より
Maple-Previewとの使い分け
同じ「手元で動く小型モデル」でも、Maple-Previewとは狙いが正反対です。
| 観点 | LFM2.5-2.6B | Maple-Preview |
|---|---|---|
| 得意 | 道具使用・エージェント処理・データ抽出・RAG | 純粋な推論。数学オリンピック級の問題 |
| 公式が挙げる弱点 | エージェントによるコーディング、知識量が要る作業 | エージェント系ベンチマーク(事後学習が最小限) |
| 規模 | 2.69B | 20B-A1B(8エキスパートが稼働) |
| ライセンス | 独自の lfm1.0 | MIT |
| 速度の公称 | M5 Maxで220トークン/秒 | M4 Mac miniで218トークン/秒 |
エージェントを動かしたいならLFM2.5、難しい問題を解かせたいならMaple-Preview。速度の公称値はほぼ同じでも、任せる仕事が違えば結果は変わります。
商用で使う場合はライセンスの差が効きます。Maple-PreviewがMITなのに対しLFM2.5-2.6Bは独自の lfm1.0で、Hugging Face上の分類も「other」です。広く知られた許諾型ライセンスではないので、条件はライセンス本文で確認する必要があります。
license: other / license_name: lfm1.0 / We recommend using it for agentic workloads, tool use, data extraction, RAG, and long-context workflows. It is not recommended for agentic coding and knowledge-heavy tasks. — ライセンスの分類と名称、および推奨用途・非推奨用途に関する記述より
Today we introduce Maple-Preview, an open-source 20B-A1B ternary-weight reasoning LLM. / It solves IMO-level problems / It utilizes a 24-layer, 256-expert (8 active) configuration / 218 tok/s M4 Mac mini / may underperform on agentic benchmarks / This preview received minimal post-training for agentic tasks and only small-scale general reinforcement learning. / Maple-Preview is released under the [MIT License](LICENSE). — 比較表に挙げた Maple-Preview 側の規模・得意分野・稼働エキスパート数・速度・弱点・ライセンスに関する記述より
まとめ:LFM2.5-2.6Bをどう見るか
LFM2.5-2.6Bの中心は手元で動くエージェントです。2.69Bという小ささでメモリ2.5GB未満に収まり、道具使用の評価では自分より大きなモデルを上回る数字が出ています。
一方で、公式が非推奨と書いた領域は言葉どおりに受け取るのが安全です。コーディングを任せる先ではありませんし、知識量が要る質問にも向きません。道具を呼んで手順を進める役に絞るなら、この規模で十分に成り立ちます。
導入を検討するなら、用途が「道具を使う作業」か「知っていることを答える作業」かを切り分けるところから始まります。前者ならこのモデル、後者なら別の選択になります。手元で動かす選択肢を横に並べて見るならオープンウェイトのモデル動向も併せて追っておくと判断材料が増えます。
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