Maple-Previewとは何か
Maple-Previewとは、DeepGroveが公開した推論(入力から答えを導く処理)に特化した大規模言語モデルです。重みの値を3種類に絞る三値重み(ternary weight)を採用し、最初から手元の機器で動かす前提で設計されています。
構成は公式表記で20B-A1B。24層で256個のエキスパート(専門家)を持ち、そのうち8個だけが1回の処理で動きます。この表記が示すのは、全体は大きいが実際に動くのは一部という作りで、これが速度と省メモリの土台です。
チェックポイント(配布される学習済み本体のファイル)は5.31GB、扱えるコンテキストは131,072トークン。公式は国際数学オリンピック級の問題を解けるとしています。同じ重量級では最高水準で、より大きなモデルとも競えるという主張です。
Today we introduce Maple-Preview, an open-source 20B-A1B ternary-weight reasoning LLM. / Maple-Preview has SOTA reasoning for its weight class and is even competitive with larger models. / 218 tok/s M4 Mac mini / 5.31 GB Checkpoint / 131,072 Token context / Maple-Preview is a 20B-A1B reasoning model designed from the start for efficient on-device inference. / It utilizes a 24-layer, 256-expert (8 active) configuration with 3:1 SWA-512:GA attention. — モデルの位置づけと公開形態、公称の速度・容量・コンテキスト長、および層数とエキスパート構成に関する記述より
速度の数値をどう読むか
目を引くのは速度です。公式が挙げるのはM4搭載のMac miniで毎秒200トークン超、公表値で218トークン/秒。Gemma 4・Qwen3.5(クウェン3.5)・gpt-ossといった効率重視のモデルより5〜16倍速いとしています。
ただしこの数値には注記が付きます。モデルカードに同梱されたTransformers(機械学習ライブラリ)向けの実装はTritonとFlashAttentionに依存し、CUDA環境(NVIDIA製GPU向けの実行環境)を想定したものです。Apple Silicon上の数値はその実装ではなく、別のオンデバイス実行環境で計測されたものです。
「モデルカードのコードをMacで動かせば218トークン/秒が出る」とは読めません。同じ速度を再現するには公開されていない別の実行環境が要ります。ここを取り違えると導入検討の前提が崩れます。
It solves IMO-level problems and runs at 200+ tokens/sec on a Mac mini M4, 5–16× faster than efficient models like Gemma 4, Qwen3.5, and gpt-oss. / The included Transformers implementation depends on Triton and FlashAttention and is intended for a compatible CUDA environment. / The reported Apple Silicon result uses a separate on-device runtime. — 公称速度と比較対象モデル、同梱実装の依存関係と想定環境、および Apple Silicon での計測環境に関する注記より
公式が認めている弱点
公式は評価について、記憶容量あたりの性能でも速度あたりの性能でも新しい到達点を示したとしています。一方でこのプレビューは純粋な推論力に絞っており、エージェント系のベンチマークでは性能が落ちうると自ら書いています。
理由も明示されています。エージェント系タスク向けの事後学習(基礎学習のあとに用途へ合わせて追加する学習)が最小限で、一般的な強化学習(良い出力に報酬を与えて振る舞いを寄せる学習)も小規模にとどまるからです。本公開に向けて学習は続けるとしています。
推論を任せる用途と道具を使わせる用途は別物です。手元で動く小型モデルを選ぶなら、この2つは分けて見ておきたいところです。
On benchmarks, Maple-Preview sets a new point on the Pareto frontier for both memory-to-performance and speed-to-performance, demonstrating its strong reasoning capabilities. / However, we note that this preview is focused primarily on raw reasoning and, as such, may underperform on agentic benchmarks. / We intend to continue improving general performance through extended training before Maple's full release. / This preview received minimal post-training for agentic tasks and only small-scale general reinforcement learning. / Maple-Preview is released under the [MIT License](LICENSE). — 評価結果の位置づけ、エージェント系ベンチマークでの制約とその理由、本公開に向けた方針、およびライセンスに関する記述より
まとめ:Maple-Previewをどう見るか
Maple-Previewは推論の速さと軽さに全振りしたプレビュー版です。5.31GBで131,072トークンを扱い、MITライセンスで商用利用もできる。ここまでは強い。
一方でMacでの速度は別の実行環境が前提、エージェント用途は公式自身が未完成だと認めています。手元で動かす小型モデルを選ぶなら、同じ時期に公開されエージェント側に振り切ったLFM2.5-2.6Bと並べて見ると違いがはっきりします。業務に組み込むなら本公開を待つほうが無難です。



