Fugu-Ultra v1.1で何が変わったか
Sakana Fugu(サカナ・フグ)とは、日本のAI企業 Sakana AI が提供する、複数のフロンティアモデルを自動で編成して1つのAPIとして使わせるマルチエージェントシステムです。単一モデルの賢さを競うのではなく、課題ごとに適したモデルを動的に組み合わせて解かせるという設計思想を採ります。基本的な仕組みや料金体系はSakana Fuguの解説記事で扱っています。
今回の v1.1 はこの編成エンジンの更新です。モデルそのものを作り直したわけではなく、編成の対象に最新のフロンティアモデルを取り込み直したという位置づけです。
Fugu-Ultra v1.1 の概要(2026年7月24日発表)
fugu-ultra-v1.1(fugu-ultra でも可)最大+7.9ポイント、価格は据え置き
公式が示した数字は「v1.0比で最大7.9ポイントの向上」の1点です。特に良い結果が出たベンチマークとして ProgramBench と Terminal Bench 2.1 の2つが挙げられていますが、個別のスコアは公開されていません。「どのベンチマークで何点から何点になったか」を確かめる術は、現時点でありません。数値で比較したいなら、公式が追加情報を出すのを待つしかない状況です。
費用面ははっきりしています。この性能向上は v1.0 と同じ価格で提供されます。利用者から見れば、支払いを変えないままモデル編成だけが新しくなる形です。編成エンジンという設計の利点がそのまま出ました。
This orchestration upgrade resulted in gains of up to 7.9 points over v1.0, with particularly strong results on ProgramBench and Terminal Bench 2.1. Fugu-Ultra v1.1 is demonstrably more capable across coding, agentic tasks, and advanced reasoning. / Crucially, this massive leap in reasoning capabilities is available today at the same price as Fugu-Ultra v1.0. — 性能向上と価格に関する記述より
「肩を並べる」と「上回る」が併存している
見落としやすい点がもう1つあります。製品ページには現在も、Claude Fable 5(フェイブル5)や Mythos Preview(ミュトス)と「肩を並べる(shoulder-to-shoulder)」という表現が置かれたままです。一方 v1.1 の発表は「複雑なコーディングと推論のタスクで Fable 5 のような先行モデルを上回っている」と書いています。同じ会社の2ページで、対 Fable 5 の主張の強さが揃っていません。
上回ったという主張には条件も付いています。Fable 5 を自らのエージェントプールに含めないまま上回った、という形です。ただしこれは「あえて外した」わけではありません。製品ページは Fable 5 と Mythos Preview について、一般提供されていないためエージェントプールに入っていない、と理由を明記しています。使えるモデルだけを編成して上位モデルに並ぼうとする設計であり、単一モデルの性能競争とは別の土俵で戦う立ち位置がはっきり出ています。
ただしこれはいずれも開発元自身の主張で、第三者検証はこれからです。個別スコアが非公開である以上、現時点では「そう主張している」以上に踏み込めません。
By dynamically orchestrating the latest frontier models, we pushed performance up by as much as 7.9 points. We are now beating leading models like Fable 5 in complex coding and reasoning tasks, without even having Fable in our agent pool. — Fable 5 との比較に関する記述より
Our Fugu models surpass publicly accessible frontier models and are shoulder-to-shoulder with Fable 5 and Mythos Preview in various rigorous engineering, scientific, and reasoning benchmarks while delivering frontier capability without the risk of export controls. / For Fable 5 and Mythos Preview, we report the max of the two if both scores are available on the same benchmark. Neither of them is in Fugu’s agent pool as they are not publicly accessible. — 製品ページ側の「肩を並べる」という主張、および Fable 5 がエージェントプールに含まれていない理由に関する記述より
Claude CodeからFuguを使う手順
v1.1 と同時に公開されたのが Claude Code 互換のエンドポイントです。Claude Code は Anthropic のターミナル用コーディングエージェントですが、接続先を差し替えれば Fugu のモデル編成をそのまま呼び出せます。公式の説明では、1つのモデルにコードの記述・デバッグ・実行を任せるのではなく、多様な最先端モデルのプールをターミナルから直接編成できるようになるという位置づけです。
手順は2通りあります。対応OSならワンライナー、それ以外は環境変数の手動設定です。
Claude Code から Fugu を使う2つの方法
| 方法 | 対応環境 | 手順 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 一括インストール | Ubuntu / macOS | インストーラ実行 → claude-fugu | ランチャーは自動更新されない |
| 環境変数を手動設定 | Windows含む全環境 | ANTHROPIC_* を export → claude | シェルセッション限りで消える |
Today, we’re making Fugu more accessible again with Claude Code-compatible endpoints for Sakana Fugu. / You can now bring Fugu’s multi-agent intelligence directly into Claude Code. This puts a dynamically coordinated team of frontier models to work inside the coding workflow you already know and love. Instead of relying on a single model to write, debug, and execute your code, you can now orchestrate a diverse pool of state-of-the-art models directly from your terminal. — Claude Code 互換エンドポイントの発表に関する記述より
一括インストールで始める(Ubuntu / macOS)
公式が案内しているのはインストールスクリプトを取得して実行する方法です。実行後は claude-fugu コマンドで、Claude Code が Fugu に接続した状態で起動します(Codex CLI 派には codex-fugu が用意されています)。
curl -fsSL https://sakana.ai/fugu/install | bash
このワンライナーが対応しているのは Ubuntu と macOS だけです。Windows の場合、またはインストールが完了しない場合は後述の手動設定に進みます。なお取得したスクリプトをそのままシェルへ流す形式なので、実行前に中身を確認しておくほうが安全です。ダウンロードして目を通してから実行しても、結果は変わりません。
Sakana Fugu plugs into the Codex CLI and Claude Code through a small provider configuration. To quickly get started, you can install Fugu with a single command: / curl -fsSL https://sakana.ai/fugu/install | bash / Then launch Codex with: / codex-fugu / or Claude Code with: / claude-fugu / The one-line install supports Ubuntu and macOS. On Windows, or if the install does not complete in your local environment, set it up by hand: see Manually Setting Up Codex for Codex, or Manually Setting Up Claude Code for Claude Code. — インストール手順と対応OSに関する記述より
環境変数で手動設定する(Windowsはこちら)
ランチャーを使わない方法もあります。Claude Code は ANTHROPIC_* という一連の環境変数で接続先を切り替えられるため、これらを設定してから claude を起動するだけで Fugu に向きます。
export ANTHROPIC_BASE_URL="https://api.sakana.ai"
export ANTHROPIC_AUTH_TOKEN="fish_..."
export ANTHROPIC_DEFAULT_OPUS_MODEL="fugu-ultra[1m]"
export ANTHROPIC_DEFAULT_SONNET_MODEL="fugu[1m]"
export ANTHROPIC_DEFAULT_HAIKU_MODEL="fugu[1m]"
export ANTHROPIC_DEFAULT_FABLE_MODEL="fugu-cyber[1m]" # 任意(アクセス許可制)
export CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL="fugu[1m]"
claude
つまずきやすい点が2つあります。1つ目は使う変数が ANTHROPIC_API_KEY ではなく ANTHROPIC_AUTH_TOKEN であること。APIキーではなくベアラートークンとして扱います。2つ目はこの設定が、現在のシェルセッション限りで消えること。毎回使うならシェルの設定ファイルに書くか、スクリプト化しておく形になります。
なお、モデル名に付く [1m] という接尾辞は公式の記述例にそのまま現れるものです。意味は Get Started ページで説明されていないため、記載どおりに写して使うのが確実です。
Codex CLI と併用する場合は、モデルカタログを ~/.codex/fugu.json として保存する手順があり、JSONを直接編集する場面が出てきます。設定ファイルは1文字の記法ミスで起動しなくなります。貼り付ける前に整形と検証を通しておくと事故が減ります。
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Claude Code points at Sakana Fugu through a set of ANTHROPIC_* environment variables, with no launcher required. The quickest way is to export them in your current shell session and then run claude. Use ANTHROPIC_AUTH_TOKEN (a bearer token), not ANTHROPIC_API_KEY. / export ANTHROPIC_DEFAULT_FABLE_MODEL="fugu-cyber[1m]" # optional (access-gated) / This lasts for the current shell session. / Save the following to ~/.codex/fugu.json. The base_instructions carry Sakana Fugu's shipped agent-conduct safety guards — 手動設定の手順、環境変数の一覧、Codex 側モデルカタログの保存先に関する記述より
モデルの対応関係とエフォート設定
Claude Code は Opus・Sonnet・Haiku といった Anthropic 側のモデル階層を前提に動くため、それぞれを Fugu のどのモデルに割り当てるかを指定します。対応関係は次のとおりです。
Claude Code のモデル階層と Fugu の対応
| Claude Code側の階層 | 割り当てるFuguモデル | 備考 |
|---|---|---|
| Opus | fugu-ultra[1m] | 最上位。v1.1が使われる |
| Sonnet | fugu[1m] | 標準 |
| Haiku | fugu[1m] | Sonnetと同じモデル |
| Fable(任意) | fugu-cyber[1m] | 利用にはアクセス許可が必要 |
| サブエージェント | fugu[1m] | CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL で指定 |
推論の強さ(エフォート)の指定にも違いがあります。fugu-ultra-v1.1 は high・xhigh・max の3段階に対応し、max は最も難しい問題向けの独立した最大値として用意されています。一方 fugu・fugu-ultra-v1.0・fugu-cyber が持つのは high と xhigh の2段階だけで、max を指定しても xhigh に読み替えられます。fugu-cyber についてはFugu-Cyberの解説記事もあわせてご覧ください。
Note: model="fugu-ultra-v1.1" (also accepted as model="fugu-ultra") supports three reasoning effort levels: high, xhigh, and max (a distinct maximum level for the hardest problems). model="fugu", model="fugu-ultra-v1.0", and model="fugu-cyber" support high and xhigh (max is also accepted for compatibility and maps to xhigh). / The Opus tier maps to fugu-ultra[1m], Sonnet and Haiku to fugu[1m], and the optional Fable tier to fugu-cyber[1m] (access gated); subagents use fugu[1m]. — エフォート段階とモデル対応に関する記述より
使う前に知っておきたい3つの制約
接続できることと、違和感なく使えることは別です。公式自身が「食い違いが出る」と明示している箇所が3つあります。
表示のずれは「見た目だけ」と公式が説明
Claude Code はクローズドソースであるため、Sakana AI 側は公開されている ANTHROPIC_* 変数とサーバ側ゲートウェイ経由でしか制御できません。その結果、画面の一部に Anthropic 側の前提が残ります。公式はこれらを「見た目だけ(cosmetic only)」と明言しており、実際に話すモデル・応答・ストリーミング・ツール利用・サブエージェントはいずれも設定どおりに動くとしています。
具体的なずれは次の3つです。
- エフォートのスライダー: Claude Code は6段階(low〜ultracode)を表示するが、Fugu 側の実体は2段階。同じグループ内の段階は同じ意味になる
- モデル選択画面: Sonnet と Haiku がどちらも
fugu[1m]に解決されるため、同じ行が2つ並ぶ。説明文も Fugu ではなく Anthropic の階層名を表示する - セッションのヘッダー: 課金や既定階層の表示が、APIトークン利用の状態を反映する
Claude Code 自体が独立して更新されていくため、新しい表示ずれが今後出てくる可能性にも触れられています。
Claude Code is closed source, so Sakana Fugu drives it entirely through the documented ANTHROPIC_* variables and our server-side gateway. A few surfaces therefore reflect Claude Code's built-in Anthropic assumptions rather than Fugu's lineup, and they are cosmetic only: the model you talk to, its responses, streaming, tool use, and subagents all behave exactly as configured. / Effort slider. Claude Code shows six stops (low through ultracode); Fugu maps them onto its two real levels at the high / xhigh boundary, so stops within a group are equivalent. / Model picker. Sonnet and Haiku both resolve to fugu[1m], so two identical rows appear; without the launcher's curated labels, descriptions name the Anthropic tier rather than the Fugu model. / Session header. Billing and default-tier labels reflect API-token usage. / Because Claude Code evolves independently, new cosmetic mismatches may surface over time. — Claude Code との互換性に関する記述より
ランチャーは自動更新されない
claude-fugu ランチャーには自動更新の仕組みがありません。新しい Fugu モデルが追加されるなど、Claude Code 向けのサポートが更新されても、手元のランチャーは古いままです。公式はGet Started ページを確認して手動で更新するよう案内しています。導入して終わりではなく、定期的に見に行く運用が前提になっています。
環境変数で手動設定しているならモデル名を自分で書き換えるだけなので、この点はむしろ楽です。
Note that the claude-fugu launcher does not auto-update: to pick up the latest Fugu support for Claude Code, such as new Fugu models, check this Get Started page and apply the update manually. — ランチャーの自動更新に関する記述より
ルーティング先のモデルは選べるが中身は非公開
fugu モデルは既定で、対応する全プロバイダを横断してルーティングします。特定のプロバイダを外したいなら、APIキーの作成・編集時に「Fugu custom model pool」を有効にし、使いたいプロバイダだけを残します。設定をオフのままにすると既定の全プールが使われます。
プロバイダ単位で絞り込めるということは、裏を返せば既定ではどのプロバイダに投げられるかを利用者が決めていないということでもあります。データの取り扱いを厳密に管理したい場面では、この設定を先に確認しておくのが安全です。
The fugu model routes across all supported providers by default. If you need to opt out of a provider for fugu routing, enable Fugu custom model pool while creating or editing the API key, then leave only the providers you want fugu to use. Leave the setting off to use the full default pool. — ルーティング先の制御に関する記述より
まとめ:数字を待つより、まず自分の課題で試す
Fugu-Ultra v1.1 は、モデルを作り直さず編成対象を入れ替えるだけで性能を伸ばし、価格を据え置いた更新です。単一モデルの性能競争とは違う土俵で勝ちに行く姿勢が、Fable 5 を編成に含めずに上回ったという主張にはっきり出ています。ただし個別スコアは非公開のままで、検証は第三者に委ねられた状態です。
数字を待つより、Claude Code から使う敷居が下がったことのほうが実利は大きいと思います。手元の課題を1つ投げて、いま使っているモデルとの差を自分の目で見るのが早いです。Ubuntu か macOS ならワンライナー、Windows なら環境変数の手動設定から始められます。



