ワイン在庫管理表に持たせる列を決める
ワインの在庫管理表づくりでいちばん効くのは、最初に列を決めることです。行はあとからいくらでも足せますが、列の設計を途中で変えると入力済みの数十行を直すことになります。ここでは、土台になる列と、ワインならではの列を分けて整理します。
この章の全体像
土台になる5つの列
在庫表として最低限成り立つのは、銘柄・生産者・ヴィンテージ・本数・保管場所の5列です。銘柄だけだと同じ名前で年号違いのボトルが区別できず、生産者を入れておくと似た名前のワインを取り違えません。本数は「今この瞬間に手元にある数」だけを持たせ、買った累計と混ぜないほうが、あとの集計で迷いません。
保管場所は、セラー・冷蔵庫・押し入れのように置き場そのものを書く列です。置き場が1つしかない段階では省きたくなりますが、セラーが2台目になったときに全行を埋め直す羽目になるため、最初から作っておくほうが手戻りが出ません。
購入の記録を残す4つの列
購入日・購入価格・購入店・評価の4列は、在庫管理というより「次に何を買うか」を決めるための列です。おいしかったワインをもう一度買おうとして、どこで買ったか思い出せない、という取りこぼしを防げます。
購入価格は、セラー全体の資産額を把握したいときにも効きます。1本ずつの金額は小さくても、合計するとまとまった額になっていることが分かります。
ワインならではの2つの列
一般的な在庫管理表の作例には出てこないものの、ワインでは効くのが飲み頃と棚位置の2列です。
飲み頃は「2028年」のような1点ではなく、飲み頃開始年と飲み頃終了年の2列に分けます。ワインの飲み頃には幅があり、1点で持つと「まだ早い」「もう過ぎた」の判断ができないためです。数式で今年と比べられる形になるので、あとの章で色分けに使えます。
棚位置は、セラーのどの段の何本目かを示す座標です。2-05 のように「段-列」で書くと、上から2段目の左から5本目、と読めます。飲み頃の考え方そのものは「ワインの飲み頃とは?熟成の仕組みと今飲むか寝かせるかの見極め方」であわせてご覧ください。
表記ゆれを防ぐ入力規則
タイプ(赤・白・ロゼ・泡)、生産国、品種のように選択肢が決まっている列は、手入力にすると「シャルドネ」「Chardonnay」「シャルドネー」が混在して絞り込みが効かなくなります。データの入力規則でドロップダウンにすれば、この表記ゆれは起きません。
データ検証を使用して、データの種類や、ユーザーがセルに入力する値 (ドロップダウン リストなど) を制限します。
[元の値] ボックスに、リストの値をカンマで区切って入力します。 — リスト形式の設定手順より
選択肢は別シートに一覧を作らなくても、設定画面の「元の値」欄にカンマ区切りで直接書けます。赤,白,ロゼ,スパークリング,その他、のように5つ程度から始めれば十分です。
エクセルでワイン管理表を作る手順
列が決まったら表を組み立てます。ここでの要点は3つで、1行の意味をどちらに決めるか、テーブルに変換するか、飲み頃を自動で色分けするか、です。
ワイン管理表を作る手順
1行を「1本」にするか「1銘柄」にするか
最初に決めるのは、1行が何を指すかです。ここを曖昧にしたまま入力を始めると、あとで集計が合わなくなります。
1行の単位をどちらにするか
棚位置まで管理したいなら1行=1本、本数の把握だけでよいなら1行=1銘柄が合います。 同じ銘柄を別々の段に入れることがある以上、棚位置と1行=1銘柄は両立しません。迷う場合は、セラーに入れるボトルは1行=1本、普段飲みのストックは1行=1銘柄、と分けて2枚のシートにする手もあります。
テーブルに変換して並べ替えと集計を効かせる
見出し行を作って数行入力したら、その範囲を選んでテーブルに変換します。素の範囲のままでも表は作れますが、テーブルにすると絞り込みと数式の扱いが変わります。
すべてのテーブルの列でフィルター処理が有効になっているので、テーブルのデータのフィルター処理または並べ替えをすばやく行うことができます
テーブルの列の 1 つのセルに式を入力することで、そのテーブルの列内の他のすべてのセルに式を直ちに適用する — 集計列の説明より
テーブルに変換しておくと、見出し行に絞り込みボタンが付き、1つのセルに入れた数式が列全体へ自動で適用されます。 行を1行足すたびに数式をコピーする手間がなくなるため、続けやすさに直結します。行に薄い縞模様が付いて視線がずれにくくなるのも、100行を超えたあたりから効いてきます。
条件付き書式で飲み頃を色分けする
飲み頃開始年と終了年を2列で持たせておくと、「今年が飲み頃の範囲に入っている行」を数式で判定できます。条件付き書式のルールに =AND($G2<=YEAR(TODAY()), $H2>=YEAR(TODAY())) のような式を入れ、G列に開始年・H列に終了年を置けば、範囲内の行だけ背景色が変わります。
同じ考え方で、終了年が今年より前の行は別の色にしておくと、飲み頃を過ぎたボトルが目に入ります。年が明けるたびに自動で判定し直されるため、手で見直す必要はありません。
棚位置を「段-列」の座標で持つ
棚位置の列には 2-05 のような座標を入れます。段は上から数え、列は左から数える、と決めておけば、家族が見ても同じ場所を指せます。棚の段数と1段あたりの本数を紙に書いて貼っておくと、入力のたびに数え直さずに済みます。
ただしセラーの公称本数どおりに入らないことがある点は、あらかじめ織り込んでおく必要があります。
ワインセラーの収納可能本数は、ボルドータイプのボトルを基準にしているものが多いため、ブルゴーニュボトルやシャンパーニュボトルといった太いボトルを入れようと思うと、スペック通りに入らないケースが出てくるんです
ワインセラーの収納可能本数は、ボルドータイプのボトルを基準にしているものが多いため、ブルゴーニュボトルやシャンパーニュボトルといった太いボトルを入れようと思うと、スペック通りに入らないケースが出てくるんです — ワインセラー専門店のコラムより
ボトルの太さで1段に入る本数が変わるため、座標は「カタログ上の定員」ではなく、実際に入れてみた並びに合わせて振るのが確実です。
エクセルでのワイン管理はどこで限界が来るか
エクセルでの管理が続かなくなる理由は、多くの人が思うところとは違います。ここを取り違えると、対策の方向を間違えます。
限界だと誤解されがちな点と、実際に詰まる点
行数ではなく、更新の手間が限界になる
まず押さえたい事実として、エクセルの容量はワイン管理では問題になりません。
1,048,576 行、16,384 列
1,048,576 行、16,384 列 — ワークシートとブックの仕様と制限「ワークシートのサイズ」より
1シートに約104万行入るため、数千本のコレクションでも行が足りなくなることはありません。テイスティングメモも1セルに32,767文字まで書けます。エクセルで詰まるのは容量ではなく、1本飲むたびに表を開いて行を直す、という動作が続かないことです。 飲んだその場でパソコンを開く人は多くないため、更新が数日たまり、たまった時点で何を飲んだか思い出せなくなります。
スマホでの入力と、家族との同時編集
スマホからでもエクセルのファイルは開けますが、家族と同時に編集するにはクラウド保存が前提になります。
SharePoint オンプレミス サイト (Microsoft によってホストされていないサイト) は共同編集をサポートしていない
Excel ブックは、.xlsx、.xlsm、または .xlsb ファイル形式で使用する必要があります — 共同編集の前提条件より
ファイルをOneDriveなどに置けば同時編集はできます。一方、パソコンのローカルに保存したものをメールでやり取りする使い方では、片方の更新が消えます。ワインは家族の誰かが勝手に開けることもあるため、共有のしやすさは思ったより効いてきます。
棚位置が実物とずれても気づけない
エクセルの棚位置は、あくまで打ち込んだ文字列です。取り出したボトルを別の段に戻したとき、表の側は何も変わりません。表の値と実物の並びがずれても、エクセルはそれを教えてくれない、という点がワイン管理では効いてきます。 数十本のうち数本がずれるだけで、目当てのボトルを探して扉を何度も開けることになり、庫内の温度が上下します。
なお、在庫管理サービス各社は業務用の文脈でエクセルの限界を挙げています。飲食店向けのワイン管理サービスwinecodeの公式サイトでは、次のように説明されています。
ワインが増えるほど表は肥大化し、探すたびに延々とスクロール。更新の手間がかかるうえに、スタッフ間でのバージョン違いも頻発します
ワインが増えるほど表は肥大化し、探すたびに延々とスクロール。更新の手間がかかるうえに、スタッフ間でのバージョン違いも頻発します — Excel管理の課題を挙げたセクションより
これは店舗運営を前提にした説明ですが、「増えるほど探しにくくなる」「更新の手間」という部分は、自宅で数十本を持つ場合にもそのまま当てはまります。
エクセルを続けるか、アプリに移すか
エクセルとアプリはどちらかが優れているというより、向く規模が違います。判断の目安を整理します。
エクセルのままで良い場合/アプリが向く場合
エクセルの強みは、列を好きに足せることと、購入価格の合計や産地別の本数といった集計を自由に組めることです。この自由度はアプリにはありません。逆に、その場で登録する手軽さと、棚位置を画面で確かめられる点はアプリが得意とするところです。
共有だけが目的なら、Googleスプレッドシートへ移す選択もあります。1ファイルあたりの上限は1,000万セルまたは18,278列までで、個人のコレクションで届く数字ではありません。
棚位置まで管理したい場合は、セラーの棚を画面上に再現して記録できるアプリが向きます。ワイン在庫管理アプリのShelvinは、複数のセラーを登録し、どの棚の何段目にどのワインがあるかを視覚的に残せます。
セラー登録と保管場所記録:複数のセラーを登録し、どのワインがどの棚(列/段)に保管されているかを視覚的に記録できます。
セラー登録と保管場所記録:複数のセラーを登録し、どのワインがどの棚(列/段)に保管されているかを視覚的に記録できます。 — グラフィカルなセラー管理の説明より
無料で16本まで登録でき、位置管理も無料の範囲で使えます。アプリごとの違いは「ワイン在庫管理アプリおすすめ比較|棚位置まで管理できるのは」でまとめています。
まとめ
ワインの在庫管理は、エクセルでも十分に始められます。銘柄・生産者・ヴィンテージ・本数・保管場所の5列を土台に、購入の記録4列と、飲み頃・棚位置というワインならではの2列を足す。範囲をテーブルに変換し、条件付き書式で今年が飲み頃の行を色付けする。ここまで作れば、手元に何があって次に何を開けるべきかは一目で分かります。
行数が足りなくなる心配は要りません。続かなくなるのは、飲むたびに表を開いて直す動作と、棚位置が実物とずれたときに気づけないことのほうです。自宅で数十本を自分ひとりで管理するうちはエクセルで足り、買う頻度が上がって家族とも共有するようになったら、その場で登録できるアプリに移すと無理がありません。
棚位置まで日本語で管理したい場合は、無料枠でも位置管理が使える Shelvin(App Store) から試すと、エクセルとの違いが分かりやすくなります。


